ある日のご葬儀の一コマ、二つ。

 

 …… 最近担当させていただいたご葬儀で、心に残ったことを二つ。

 

 

 

 写真は、ゴールデンウィークに家族と見に行った、佐賀県武雄市にある樹齢3,000年の楠(くすのき)。

 この大きな楠のように、大地にしっかりと根を張り、ご家族様にとっては 大きなぬくもりに満ちた存在だったであろうお方が、先日、司会を担当させていただいた94歳の故人様でした。

 

 大正の世にお生まれになり、若き日を戦争という大きな波に呑まれ、激動の昭和を越えて平成へ。お子様、お孫様、更にはひ孫様にも恵まれた故人様。近しいお身内で執り行った家族葬でしたから、故人様についてのご紹介ナレーションの作成はご希望がなく、今回は、故人様の生前のご様子についてご遺族様からお話をお伺いする機会はありませんでした。

 

 ご出棺前の最期のお別れの時、お棺の傍らでわんわんと大泣きしているのは、小学2~3年生と思われるひ孫様。故人様は直近まで、このひ孫様とも しっかりコミュニケーションが取れていたのだなぁと感じました。お棺の蓋が閉じられた後も、少年は目を真っ赤にし、大泣きしていました。

 

 いよいよご出棺も間近となった時。いつも 心温まるお勤めやご法話をいただくご導師・法泉寺のご住職様が、少年の傍らで、『お爺様は、いつでもあなたのお側にいらっしゃいますよ。』と、優しいお言葉をかけておられました。そして、小さい方にも解るようにご供養の仕方をご説明されたようでした。真っ直ぐな目で大きくうなずきながら聞いておられたひ孫様。その後、ご会葬の皆様が集まるロビーでは涙を見せず、喪主様のお隣で ご位牌の一つをしっかりと持つ姿に、頑張れ~!と心の中でエールを送っていた私でした。(涙、鼻水出なくてよかった!私。)

 

 

 

 

 そして、50代という大変お若い故人様のご葬儀も担当させていただきました。こちらは、生前のご様子をご紹介するナレーションのご希望があり、喪主様にお伺いして作成し、告別式でナレーションをさせていただきました。

 

 お式が終わって4~5日経った頃でしょうか。斎場から私宛に電話があり、喪主様が 私が作ったナレーションの写しをほしいとのこと。これまでにも担当したご葬家様から、お式終了直後にそのようなご希望をいただいたことは何度もありますが、一時経って、というのは初めてでした。司会者冥利に尽きることで、大変ありがたいです。斎場経由で喪主様ご本人に住所等確認を行い、偶然にも私の自宅の近所だったため、即お届けしました。(郵便受けに入れた後、斎場から喪主様へ連絡していただき、お会いすることはありませんでした。)

 

 帰り道、私は告別式の時の喪主様のご様子を思い出していました。大変 気丈になさっていた喪主の奥様。お一人でたくさんのご会葬の皆様のお相手をしていらっしゃいました。ご出棺の時、通常 喪主様は霊柩車の前のお席にご位牌を持って座るのですが、火葬場まで故人様の近くに居たいと出発直前に運転士にリクエストがあり、後方のお席にご移動なさいました。これには、ジンときました。長年 斎場に勤めている運転士さんも初めての経験だったそうです。

 

 いろんなドラマがあり、故人を想う皆様の優しい気持ちに気付かされます。

 ご遺族の皆様がお元気でいらっしゃいますように。