西洋料理発祥の碑と草野丈吉

 長崎の観光名所のひとつにグラバー園があります。グラバー園はその昔、長崎市が南山手のグラバー邸地区一帯を整備し、市内に散在する幕末から明治にかけての洋館を移築して明治の長崎を再現しようという計画の下、昭和49年9月、4棟の洋館がグラバー園内に移築復元されました。

 

 その中の一つ旧自由亭は、元々は、日本の西洋料理の魁で本邦初の西洋料理店を開いた長崎市伊良林地区出身の料理人・草野丈吉(くさの じょうきち)が、明治11年に長崎市馬町に開いたお店『自由亭』です。移築時には長崎地方裁判所に売却され検事正官舎として使用されていたため、グラバー園内では『旧自由亭』と表示されています。

 

 この自由亭の傍らに昭和52年、全国の司厨士(西洋料理のシェフ)の団体・全日本司厨士協会によって、『西洋料理発祥の碑』が建てられました。昨日10月25日は、『西洋料理発祥の碑』建立40周年記念式典が、秋晴れのグラバー園で行われ、その司会を担当させていただきました!県内のみならず全国から名だたるシェフの皆さんが、真っ白なシェフスーツとコック帽姿で、旧自由亭前に大集合しました!

 

 式典では、諏訪神社様により神事が執り行われた後、全日本司厨士協会名誉総裁(元 農林水産大臣)武部 勤様のご発声により、発祥の碑の前で、参列者全員で赤ワインで乾杯を行いました!

 

 

 またその後、グラバー園下のANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒルに会場を移して行われた講演会では、前長崎市歴史民俗資料館長の永松様より『本邦初の洋食屋』と題して基調講演をいただき、日本初の西洋料理人・草野丈吉についてお話いただきました。

 

 草野丈吉は、1840年6月 長崎市伊良林の農家の長男として生まれ育ち、その後、長崎のオランダ人に雇われ、使用人を経て、西洋料理のコックのみならず、実業家として大成した人物。なんと草野丈吉は、五代友厚や後藤象二郎、岩崎弥太郎との交友録やビジネスパートナーとしての史実が残っているそうです!と言うことは、坂本龍馬も長崎で丈吉の西洋料理を食べていたのかもしれません!!長崎に自由亭を開いた丈吉は、やがて大阪、京都、神戸へと進出していきます。その生涯は本当に激動!連続ドラマになったら大ヒット間違いなしです!永松先生のお話を聞きながら、私の中では、菅田将暉さん扮する草野丈吉が、ディーンフジオカさん扮する五代友厚や、福山雅治さん扮する坂本龍馬に西洋料理をふるまっているドラマが早くも始まっておりました。皆さんも、日本の西洋料理の黎明期を丹念に追い、西洋料理の魁・草野丈吉と自由亭について綴った永松先生の最新書『本邦初の洋食屋~自由亭と草野丈吉~』を、ぜひぜひご覧くださいませ!!

 

 講演会の後は、西洋料理発祥の碑建立40周年と顕徳章受章者を祝い、全国から集まった協会会員の皆様とご来賓を招いての懇親会が華やかに開催されました!こちらも司会を担当させていただきました。さすがはシェフの皆さんのパーティーだけあって、会場のグラバーヒルホテルのシェフの皆さんのお料理も気合十分!また、見事な氷彫刻の展示もありました。お料理の写真は司会中で撮れませんでしたが、ステキな氷の彫刻は写真をご覧くださいませ!全国のシェフの皆様には、長崎の食をご堪能いただき、アトラクションの中国変面ショーも大変盛り上がり、盛会のうちにおひらきとなりました。

 

 今回は、誇り高き日本の西洋料理人の皆様の結束力と、先人の偉業を讃え感謝するお姿を間近で見させていただきました。西洋料理発祥の地・長崎に住む一人として、私も草野丈吉の偉業を発信してきたいと思います!(写真の本の表紙が草野丈吉さんです。上野彦馬さんが撮られたお写真だそうです。)

 

 司会のご依頼をいただきました長崎県本部の坂本会長様、株式会社創見様、会場のグラバー園様、ANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒル様、大変お世話になりありがとうございました。